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「かえるのトンネル」誕生物語
昔々、あるところに一人のかえる好きな絵描きがおりました。絵描きは奥さんと生まれて間もない赤ちゃんの三人暮らし。「じぶんの子供にいつか絵本を描いて、プレゼントしてあげたいものだ」。と、常々思っていたのでした。

ある日のこと道を歩いていると、なにやらモゾモゾと地面を動くものの姿が目に映りました。
目があまり良くない絵描きは「や、これはどうしたこと。犬のうんちが歩いている。面妖な!」
と思い目を凝らすとそれは大きな「ひきがえる」でした。都会の街中でかえるに出会えた嬉しさとともに、「危ないなあ、こんなところを歩いていると、車にひかれてしまうぞ、、、」そう思ってかえるに手を伸ばしたとき(あ、できた!)頭の中を閃光が走り抜けました。(という気がしたのですが。)
そう、かえるの絵本の骨組みが、しっかり出来上がった瞬間でした。

絵描きはかえるを、自分の間借りしている家に連れかえりました。そして、小さなかえるの額!?ほどの裏庭に放したのでした。

絵描きは早速、忘れないうちに小さな絵本の見本(ダミーと呼ばれています。)を作りました。あまりに急いで描いたので鉛筆はこすれて真っ黒け。文字も自分でも読めないような代物でした。

それでも、出来上がってみると「我ながらおもしろい!」・・・しかし。プロの目で見たらどうなのか、を確かめたくて仕方ありません。そこで,絵描きは無謀にも絵本の世界では最も、名の知られた出版社にその「ぐちゃ」な見本を持ち込んで見てもらうことにしたのです。

幸運なことにその願いはすぐに叶いました。

良書を出すことで定評のある、出版社の編集者は鉛筆でこすれ、良く読めないゴミのようなダミーをそれはそれは丁寧に静かにじっくり見終わると一言。

「おもしろいですね!」

そういってくれたのです。
続けて、「お世辞などではないですよ。必ず、良い絵本になりますよ。頑張って下さい!」と、励ましてくれたのです。

絵描きは天にも昇る心地でした。そして、「このお話をどんなことがあっても描きあげるんだ!」という勇気も、もらったのでした。

それから、4年の歳月と30数回におよぶ描き直しを経て、絵本は「かえるのトンネル」というタイトルで完成したのです。

そしてこれも幸運なことに、絵描きの子が自分で絵本が読めるようになった、ちょうどそのタイミングでプレゼントすることが出来たのです。

今でも絵描きは、そのとき関わってくれた編集者には、心から感謝しているようです。
いやあ、良かった。良かった。めでたし。めでたし。